研究成果

紫外領域における金星の雲の散乱特性2017年7月19日

金星は厚い雲の層に覆われています。可視領域で見られるのは、地上から約70 kmの高さにあるこれらの雲により反射された太陽光です。紫外(UV)領域でも可視領域と同様で、あかつきに搭載されている紫外イメージャ(UVI)はこれらの雲により反射された太陽光を測ることができます。

この反射太陽光の強さには規則性があり、太陽光が反射される方向によって光の強さが変わり、これは雲粒子(エアロゾル)の大きさで決まります。とくに太陽が「あかつき」のカメラの背後に位置し、金星がカメラの正面にある場合、つまり太陽・あかつき・金星が直線上に並ぶ場合(位相角がゼロ)、「グローリー(後光)」と呼ばれる興味深い現象が起こります。これは位相角がゼロに近いときに反射光の強さが極大になる現象です。金星のグローリーは2014年に報告されており、UVIは波長283 nmと365 nmによる観測であらためてこの現象を確認しました。また、今回の波長283 nmでのグローリーの解析は、金星観測の歴史で初めてのことです。

図1は2016年5月5日と6日の24時間にわたって波長283 nmで観測された4つの画像を示しています。これらの画像は位相角(太陽-金星-あかつきのなす角)の小さい順に左から並んでいます。紫外吸収物質(SO2)による暗い模様があり、位相角が0度に近い4度から8度の間の画像に明るい模様が見えます。観測された太陽反射光の強さは位相角が0度から50度まで増加するにつれ急激に減少しています(図2)。わたしたちは紫外画像のこのような振る舞いを解析し、雲を構成するエアロゾルの平均的な粒子の大きさが半径約1.26 µmであるという結果を得ました。これは先行研究と類似の結果です。

わたしたちはさらに、図2に示すようにモデル計算により求められた位相角依存性が測定値と合致する条件を探索することで、図1に見られるような暗い模様を生じさせるSO2の存在量を雲頂付近で80-400 ppbv(ppbv: 体積比10億分の1)と見積もりました。今後の研究として、わたしたちは雲頂高度付近のSO2の存在量をより精度よく見積もり、UVIの観測できる波長283 nmと365 nmの画像を用いて、紫外の反射率(アルベド)の特性を明らかにしたいと考えています。

「あかつき」の紫外イメージャによって撮影された、異なる位相角での波長283 nmの金星画像図1. 「あかつき」の紫外イメージャ(283 nm)により観測された金星の反射率(アルベド)の画像。

波長283 nmでの観測された反射率とモデル化した反射率の位相角依存性図2. 波長283 nmでの観測されたアルベドとモデル化したアルベドの位相角依存性(縦軸は位相角30度のアルベドで規格化している)。黒点は観測されたデータで、色つきの実線は雲頂高度付近でのSO2の存在量を80 ppbvから400 ppbvの範囲で変えるなどした、さまざまな条件の大気におけるシミュレーション結果を示す。