金星大気を通り抜ける電波を聴く
電波掩蔽(えんぺい)とは、探査機が地球から見て惑星の背後に隠れるときに探査機から電波を送信して惑星の大気の構造を調べる観測手法です。電波は惑星大気をかすめるように通過して地上局で受信され、この受信電波の周波数と強度が時間とともに変化します。その様子を体験していただくために、2016年5月6日の「あかつき」電波掩蔽観測のときに記録した受信電波の周波数を人間の可聴域までずらして、音にしてみました。最初のほうでは音の高さが上がっていきますが、これは「あかつき」と地球の軌道運動によるもの(ドップラーシフト)です。途中から音が下がっていくとともに音が大きくなったり小さくなったりしますが、これは金星大気中で電波が屈折するために起こるものです。この屈折の角度を周波数変化から算出して、大気の屈折率を求め、そこから気圧や気温の高度分布を求めます。
by Ralph D. Lorenz (Johns Hopkins Applied Physics Laboratory, USA), RSチーム