ミッション「あかつき」が拓く金星大気科学

「あかつき」の4台のカメラ(IR1、IR2、LIR、UVI)は、地球の気象衛星「ひまわり」のように、金星を覆う雲の様子(位置や形、また温度や雲を構成する物質の量など)を画像として捉えることができます。雲は生まれたり消えたり形を変えますが、時間をおいて撮影した画像に共通する雲の特徴を追いかけることで、雲の動きが分かります。このような寿命の長い雲は大気の流れ(風)に乗って移動すると考えられ、金星大気の東西や南北方向の流れを推定することができます。またこれらのカメラは、異なる高度の雲を見ているため、金星大気中の風を立体的に知ることができます。さらに雷・大気光カメラ(LAC)により雷が観測されれば、雷を生む積乱雲がもつような上昇気流など、異なる高さをつなぐ流れの解明につながります。

上で述べたような雲の形の時間変化を分析することで、大気中を伝わる波動の情報を得ることができます。地球では海底で大きな地震が起きると、津波が遠くまで伝わります。大気中でも同様に、さまざまな方向に伝わる大気波動(原因もまたさまざまです)がエネルギーの運び手になるなど、その惑星の大気現象に対する重要な役割を担っています。「あかつき」データから得られる大気波動の情報から、スーパーローテーションのような大規模な流れとそれよりずっと小さなスケールの流れとの相互作用、大気下層と上層のエネルギーのやりとりなどについて理解が進むことが期待されます。

地球の気象学は、多くの観測データに支えられて発展してきました。「あかつき」が地球に届ける金星大気のデータを豊富な情報源として、金星の気象の姿が明らかにされ、それがまた地球の気象の理解を深めることでしょう。

探査する「あかつき」のイメージ画像