ミッションプロジェクトの目的
「あかつき」プロジェクトの目的は、金星大気の3次元的な動きを明らかにし、金星の気象学を確立することです。
金星の探査は1960年代に始まり、アメリカ、旧ソビエト連邦が相次いで探査機を金星に送り込みました。そこで見えてきたのは、地表は高温で海はなく、分厚い大気に覆われ、大気の組成や大気の流れ方も地球とは大きく異なる金星の姿でした。

左は1979年にパイオニア・ビーナス・オービター(NASA)が紫外線で撮影した金星。中央と右は1990年にガリレオ(NASA)がそれぞれ固体撮像カメラ(SSI)と近赤外マッピングスペクトロメーター(NIMS)で撮影。
特に大気の流れに大きな謎が残されています。金星は自転周期が243日と非常にゆっくりですが、雲頂付近の大気は秒速100 mの速さで流れ、大気が地面の60倍もの速さで回転しています。地面に対して大気が速く動いていれば、大気は地面との摩擦により引き戻され、地面と同じ速さになると考えられますが、金星の場合は大気が高速で先行し続けています。金星のこのような風は、「スーパーローテーション」と呼ばれており、原因はいまだ明らかになっていません。
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
矢印の方向に大気が高速で回転している。
金星探査機「あかつき」は、この大気の謎を解明するため、異なる高さの大気の動きを観測し、3次元的な大気の流れを明らかにすることを目的としています。また、金星を覆う分厚い雲の成因や雲の中での雷の有無にも迫ります。さらにこれらの知見を合わせることで、金星の気象学を確立し、より普遍的な惑星気象学の樹立を目指しています。