ミッション金星大気の観測
「あかつき」は波長の異なる5台のカメラを用いて、金星大気の3次元的な動きを明らかにします。また、水蒸気や一酸化炭素、二酸化硫黄に吸収される波長帯での観測により、これらの物質の分布が時間によってどのように変化するのか調べます。
金星は厚い硫酸の雲で覆われており、雲の下の大気や地表の様子を私たちの目で直接見ることはできません。しかし1980年代から1990年代にかけて、特定の波長の赤外線を使えば雲の下の大気や地表面を透視できることが分かってきました。波長の異なる赤外線は雲の透過度合いが異なるため、複数の波長で観測を行えば、様々な高度の大気の流れの情報を得ることができます。
「あかつき」は金星を約10日で一周する楕円軌道(金星に最も近づくところ(近金点):千~1万 km、金星から最も遠ざかるところ(遠金点):37万 km)を回っており、周期的に金星との距離が変化します。遠金点付近では、広域の連続的な観測によりグローバルな大気の流れを捉え、近金点付近では雲の詳細な構造や、大気を水平方向に見ることにより大気の高さ方向の構造の観測に挑みます。地球が金星に隠れる時には電波発振器による気温などの高度分布観測、太陽が金星に隠れる時には雷や大気光の観測など、金星、地球、太陽の位置関係に応じた観測ミッションが課されています。
「あかつき」に搭載された金星大気観測のための6つの装置は、それぞれ観測できる大気の高度や対象が異なります。図の左には、観測対象と観測のための装置、右には観測高度が示されています。また時間をおいて観測された雲などの模様を追いかけることで、風速の分布(風速ベクトル)を得ることができます。